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和紅茶を通し人と時をつなげる橋渡しをする長野園発ブランド、TEAISM

第二次世界大戦後、農地開放の影響を受けながら1947年に創業した長野園。同園が手がける和紅茶のこだわりや新ブランドTEAISMについて、代表の花水さんに語っていただきました。


長野園の歴史と和紅茶への転換

—長野園の創業背景や和紅茶を始めるきっかけについて教えてください。

1947年、戦後の農地開放を受け、当時の初代が家を守るためにお茶の栽培を始めたのが長野園の始まりです。しかし、和紅茶を本格的に手がけ始めたのは2010年代から。実は地元の小学校で行ったお茶の教室が転機でした。

緑茶を紹介した際、子供たちの反応が薄かったのに対し、紅茶を淹れた瞬間、目を輝かせたのを目にしました。その時「和紅茶を作ろう」と決意しました。そこから試行錯誤の毎日が始まりましたね。

—なるほど!でも花水様は奥様の実家の茶園を引き継いだとのことですが、当初は紅茶の知識が少なかったと思います。

そうですね。最初は全くわからず本当に試行錯誤でした。本質的な技術を掴むまでは何年もかかりました。しかし転機がありまして、国内トップクラスの紅茶生産者さんが作られた和紅茶を飲んだ瞬間に、「これは違うぞ」と思い、その紅茶生産者のもとへ赴き勉強させていただき、自分たちのやり方を再構築しました。また機械設備の改良や独自の栽培方法の確立にも注力しました。


技術革新と紅茶作りへの情熱

—長野園の和紅茶の特徴について教えてください。

そもそもの話なのですが、技術的な工夫以上に大切にしていることがあり、それは「紅茶を通して、人と時をつなげる」という目的です。抽象的なのですが、一杯の紅茶を通して皆さまに「豊かなひとときをお届けしたい」という目的意識に違いがあると思います。技術や栽培、設備などはその目的を達成するための手段なんですよ。

—なるほど、技術的な違いよりも想いを一杯に閉じ込めるということですね。そういう風にとらえるのは面白いですね!

もちろん技術的にも違いはありますよ!しかしなんといってもお茶は不思議な存在です。栄養素がほとんどない(カロリーベースでいくと0kcal)のに、世界で最も飲まれている飲料の一つです。

その理由を考える中で、「お茶の力は、人と時を繋ぐことにある」と気づきました。特に人間の脳は、1日の約6万回の思考をするんです、しかし今この瞬間に集中しているのはわずか2割程度とされています。その限られた「今」の時間を、お茶を通じて豊かに広げることができる。これがお茶の本質だと思います。日々忙しい中の今その瞬間を、感覚をフル活用してより豊かに楽しむ機会を提供するということをTEAISMは目指しています。



—2割しか考えていないんですか!「今」に集中する割合をなるべく増やしていけるお茶を提供してゆくのが長野園さんのミッションなんですね。茶園でいう特徴はあったりするんでしょうか?

長野園の茶園は広大な茨城県の平地にあり、夏の暑さと冬の寒さが織りなす寒暖差が茶葉の味わいを形成します。この寒暖差やストレスが紅茶の味わいを深める要因となっています。また、大量生産の流通に頼らないことで、紅茶専用の栽培や肥料設定を自由に行えるのが大きな強みです。やはり緑茶ベースで栽培をしていると、茶葉に肥料の比重が乗ってしまい、紅茶にしたときに味や香りが損なわれてしまいますからね。

(茨城県の長野園様の茶園)

(長野園様の工場)

—長野園さんがご提供する和紅茶を実際に飲んだ際に英国紅茶と大きな違いを感じました

和紅茶は日本国内の品種と風土で育まれたもので、ストレートで飲んだときにすっと馴染む繊細な香りと味が特徴です。低発酵の紅茶では緑茶のようなニュアンスが感じられることもあります。さらに、1番茶と2番茶の違いもユニークです。1番茶は香りを重視したライトな仕上がりで、2番茶はしっかりとした味わいとボディ感が特徴です。


リブランディングと未来への挑戦

—TEAISMというブランドを立ち上げられた背景について教えてください。

リブランディングを決意したきっかけは、経営理念を再定義するプロセスから始まりました。1年かけて自分自身としっかりと向き合い経営理念を練り上げました。「大切なひとと、ときを豊かに」という理念を掲げ、その理念を体現するブランドとしてTEAISMを立ち上げました。

この過程では、専門のデザイナーと1週間の合宿形式でブランド構築を行い、パッケージデザインや製品コンセプトを細部まで詰めました。その際、新商品として登場した包装資材メーカーのパッケージを採用したのも大きな転機です。細部に至るまでデザインと機能性を追求した結果、現在のTEAISMブランドが完成しました。

—リブランディングで苦労した点はありますか?

ブランド構築に私にとっては多額のコストと時間をかけたことですね。すべてを見直し、消費者にとって価値あるブランドを届けるためには、経営者として大きな意思決定を迫られました(笑)。またデザインプロセスでは、アイデアをその場で柔軟に変更しながら進める必要があり、そのダイナミックなプロセスがTEAISMの個性を生み出しました。

—TEAISMを提供して、お客様からの反応やお客様とのエピソードはありますか?

私たちが提供するTEAISMの製品に金木犀の香りがある紅茶があるのですが、一度試飲したお客様が過去の記憶を呼び覚まし、「小さい頃に庭で遊んでいた金木犀の香りを思い出した」と話してくれました。その方にとって、紅茶を飲む時間が幼少期の思い出と結びつき、心が癒される瞬間になったということで、これぞTEAISMが作り出したい世界観だなと思いやってよかったなと感じました。日々の記憶や情景が一杯の紅茶を通じて蘇る機会を、TEAISMを通して作っていきたいです。

—そのエピソードは嬉しいですね!TEAISMは繊細な香りですよね、私も飲んでいて色々な考えを巡らせる感覚になりました。


長野園のTEAISMの和紅茶の特徴と未来への展望

—消費者におすすめの製品やペアリングについて教えてください

春摘みの“春麗”と夏摘みの“琥珀”は特におすすめです。同じ畑から取れた茶葉でも、季節によって全く異なる香りや味わいを楽しめます。春麗はフラワリーで繊細、琥珀はフルーティーでボディ感のある仕上がりです。同じ茶葉なのにこんなに違うんだというのを感じていただけるかと思います。

また、紅茶はスイーツだけでなく、和食や洋食ともペアリングが可能です。濃い味にはしっかりした紅茶を、繊細な味には軽やかな紅茶を合わせるといいですよ。例えば、琥珀は重い味の洋菓子と相性が良く、春麗は繊細な味わいが特徴な和菓子と一緒に楽しむのがおすすめです。



他にもおすすめは沢山あります。
「貴婦人」は圧倒的に華やかで、国産紅茶は物足りないと感じている方におすすめです。「白露」はエッジが立っている、香りがシュッと入っており緊張感があるといった表現が合う紅茶です。「絹」は繊細で、私個人的にも思い入れがあり、周りの人におすすめしてファンになる人が多いですね。孔雀はミルクティーが好きな人にはおすすめです!

—春麗を飲んでみましたが、スッと入ってくるような紅茶で、普段紅茶を飲まない私でも虜になりました!リラックスしたい時などに飲みたい一品ですね。

—最後に長野園の今後の展望についてお聞かせください。

長野園は、自然と対話する紅茶作りを通じて「人と時を繋ぐ」ことを目指していて、更にTEAISMブランドを広げていきたいと思っています。大量消費大量生産のスパイラルに巻き込まれている、また「いいもの」を作っている方々は日本に沢山いるのですが、私たちの製品を広げていい意味で商売として盛り上がることで、生産者が目指したいと思っていただけるロールモデルを作りたいですね。

その中で、日本紅茶のGI(地理的表示保護制度)の取得も視野に入れています。これにより、品質の高い紅茶を守り、消費者が安心して選べる環境を整えたいと考えています。

—ロールモデルは壮大でインパクトのある展望ですね!花水さんの個人的な目標やしていきたいことはありますか?

沖縄での紅茶生産に関わりたいですね。やはり茨城県だけにとどまらず、沖縄のような観光地であり、日本全国や世界中から人々が集まる土地で和紅茶を広げていくとスピードが早くなるのではと思ってます。沖縄で紅茶を購入した人々がその土地での思い出を再び蘇らせるきっかけになり、観光と和紅茶の相性はいいんじゃないかと思っています。

あとは私自身海が好きなので沖縄で仕事したいです(笑)

今回取材にご協力いただいた花水様


取材を終えて

長野園が目指すのは、紅茶を通じて人々の日常を豊かにすること。和紅茶の新たな可能性を模索するその姿勢は、消費者にとっても魅力的です。

長野園の和紅茶が持つ可能性—それは、人と土地、そして時間を繋ぐ一杯に秘められています。次回のティータイムには、ぜひ長野園の和紅茶をお試しください。

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