組み立て式屋台「ATHITA」は、香川県高松市で創業した、家具・建具メーカーである井上製作所が制作している。簡単に組み立て/持ち運びができることから、”明日”にでもお店を出せる什器として販売/レンタルを推進。2023年に特許を取得しており、今後もさらなる進化が期待される。
井上製作所メンバー
代表:井上理輝(左から4番目)
顧客の要望から生まれた、組み立て式屋台「ATHITA」
MONODUKURI(以下MD):「ATHITA」について、生まれたきっかけは何だったのでしょうか?
井上理輝(以下、井上):実は、お客様からの一つの依頼がすべての始まりでした。雑貨を販売するお店の内装を手掛けている中で、“外で商品を並べて販売する用の什器を作ってほしい、解体/組立を繰り返せるものがありがたい”という要望があり、そのご要望に応える形で作ったものが、ATHITAの原型になりました。そこで、思いのほか良いものができたので、これ単体で新しい商品として売り出していこうかなと。
MD:なるほど。顕在化している需要から生まれた商品なんですね。
井上:そうですね。
組み立て式屋台「ATHITA」
MD:ATHITAの特徴について、簡潔に言うと?
井上:一番の特徴は「コンパクトさ」ですね。組み立てや解体が簡単で、宅配便で送れるサイズに収まる点です。ここは他社さんと比べても優れている所かなと思います。また、非常にシンプルな構造になっているので、用途に合わせてカスタマイズが可能な点も特徴の一つですね。
MD:コンパクトさやカスタマイズ性などは、商品開発段階からこだわっていたポイントなのでしょうか?
井上:そうなんです。当初は2輪車の上に陳列の什器を置いてやっていたこともあったんですが、どんどん使い勝手を良くしていこうと試行錯誤をして、今の形に落ち着いたんですよね。
自ら使ってみる。
ユーザー目線のものづくりでプロダクトを洗練
MD:具体的には、どんな試行錯誤があったのでしょうか?
井上:自分たちで実際に商品を使用しながら、改善を繰り返していった形です。
実は、いざ商品を売り出そうとした矢先にパンデミックが起きてしまって。ATHITAを使うような市場が消し飛んでしまったので、それなら自分たちで出店してみようじゃないかと。野外イベントなどにお店を出すなかで、自分たちの使い勝手が悪いところをあれやこれやと修正していったんです。
MD:ばっちりユーザー目線の開発ができていたんですね。
井上:そうですね。自分たちで使っていたので(笑)
MD:自分たちで使うなかで、”最初はこう思ってたけど、やっぱりこっちの方がいいな”といった風に、開発の方向性を変えていった部分はあるんでしょうか?
井上:ありますね。例えばこの写真のジョイント部分なんですけど、最初は1本で作っていたところ、収納しにくかったので、分割してジョイントを付けたんです。
あとは、屋根のところですね。野外で使っていると、風が強い日は屋台ごと飛んでいきそうになるんですよ。じゃあもう屋根だけ飛ばしちゃえと(笑)屋根を固定しないつくりにしてるんです。そうすることでお店自体は守られるという、ちょっとした発想の転換ですね。
脚部分のジョイントによりコンパクトな収納が可能に
MD:ATHITAの機能や特色で、特に気に入っているところはありますか?
井上:これも屋根ですね。屋根がついていることで、商品を上から吊り下げることができるんです。展示会とかで小さいブースを構えた時に、台の上に商品を並べるだけだと、どうしても遠くから目に留まりづらいという課題がありまして。屋根から吊り下げることで、遠くのお客さんの目にも留まりやすくなるんですよ。ここはいい機能だなと思っていますね。
屋根を活かした展示事例
MD:確かに、お店の可能性がぐっと広がりますね。
井上:そうですね。上記のアパレルブランドさんのポップアップで使っていただいた例だと、屋台というより、ハンガーとして使われています(笑)こうした例も屋根があるからこそですね。
什器から街へ。
レンタルを起点に、更なる広がりのあるブランドを目指して
MD:ユーザーとして、どういった層を想定されているのでしょうか?
井上:百貨店さんのように、ポップアップや展示会を企画されている企業さんや、そうした企画に出展されている企業さんに使っていただけると嬉しいなと思っています。また、低コストでお店をオープンできるので、これから自分たちの商品を世に出していきたいというお客さんに使っていただけたらなと思います。
自然にも街にも溶け込めるデザイン
MD:ATHITAの今後の展望について教えてください。
井上:レンタル事業を拡充したいと思っています。イベントに合わせて何台かレンタルしたい、といった需要が多かったので、実は去年からレンタルでのご提供をしているんです。サイト上でレンタルから返送までを完結できるようなシステムを整えて、ここをもっと伸ばしたいなと。
MD:レンタルできるとお客さんの裾野が広がりますよね。
井上:そうなんです。レンタルをきっかけとして、店舗内装などのお仕事に繋がっていけばいいなと思っています。什器から店舗、店舗から街へと、広がりを持っていければ面白いですよね。