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素材と季節を存分に味わえる函館の老舗冷菓屋の冨士冷菓に迫る!

【創業のルーツ】映画館から始まったアイスの歴史

—まずは創業背景を教えてください!

当時は映画館が町中にたくさんありまして、休憩中に冷たいお菓子としてソフトクリーム等を販売したというのが始まりでした。当時は映画館くらいしか娯楽がなかったので町中に沢山ありました(笑)

しかし時代とともに映画館は減少していき、『本格的な高級アイスクリームを作る会社』になろうと決め、方向転換をしました。最初のアイスとしては抹茶アイスクリームを開発し提供し始めました。次第に人気になってきて、卸売りしかしていなかったのですがお客様へダイレクトに販売する小売りにも挑戦し始めました。

当時は多くの冷菓屋がありましたが、現在では冨士冷菓だけが残っています。味が美味しいと評判を呼び、リピーターのお客様も増えてきており支えられ、今に至ります。そのため「冨士冷菓であれば抹茶アイスクリーム」というお客様もいらっしゃいます。昔懐かしい味で今でも人気のフレーバーの一つです。


こだわりのアイスを日々進化させ、おいしさを追求する

—冨士冷菓さんのアイスを私自身試食したのですが、本当に美味しかったです。またフレーバーも沢山ありますよね。

そう言っていただけて嬉しいです。ありがとうございます。おっしゃる通りで冨士冷菓はいろんなフレーバーを日々開発しています。現在約45フレーバーが揃っていて、シャーベット10種類、アイスクリーム35種類。これは季節によって数は変わりますが、今はこのような比率です。

また私たちは一回作ったら終わりではなく、今あるフレーバーを常に進化させていく姿勢でアイスクリームに向き合っています。例えば蜂蜜を使ったアイスクリームがあるのですが、今まで使っていた蜂蜜だと「ほんのり蜂蜜感を感じる」くらいの味の強さで牛乳に負けてしまっていました。しかしたまたま函館に養蜂園を見つけまして、いろいろある蜂蜜の中から香りの強い「諸花蜜」という蜂蜜をすすめていただき、実際使用したところ牛乳に負けない蜂蜜感を表現でき、さらに美味しいアイスクリームに仕上がりました。

—なるほど、既存のフレーバーに関しても改良を加えて美味しくする姿勢がこんなにも美味しいアイスクリーム/シャーベットを作れている秘訣だったんですね。実際のお客様の反応はいかがですか?

私たちのお客様はリピーターが多く、夏は観光客が非常に多いのですが、夏冬にかかわらずお越しいただく地元のお客様も多く、喜ばれている実感があります。その信頼に応えるため、これからも素材と技術の両方で妥協しない商品を作り続けたいと思います。


こだわり抜かれた素材と製法で提供するアイスクリーム

—冨士冷菓さんでは素材の品質にもこだわっていると伺いました。どのような素材が使用されているのですか?

そこまで特別ではないのですが、主に冨士冷菓のアイスクリームには雪印牛乳を使用しています。やっぱり北海道といえば雪印牛乳で、創業以来ずっと変えておりません。

でもやはり冨士冷菓のアイスクリームの特徴としては、ミルクの香りやコクを最大限に活かしています。生クリームは高濃度のものを取り入れていて、乳脂肪が47%という濃厚なタイプを予約して仕入れています。全体の乳脂肪濃度は9〜10%と、アイスクリームの基準(8%以上)を超えるほど高くしています。ちなみにコンビニにならんでいるアイスで品名に「ラクトアイス」、「アイスミルク」という表記をみたことありませんか?あれは乳脂肪分のパーセンテージで決まってきます。
また乳脂肪分が高ければ高くなるほど原価は高くなってきますので、コンビニアイスとかになると「アイスクリーム」を提供できる会社は少なくなってきますね。

—なるほど!そういった品目の違いがあるのですね。乳脂肪分が高いとアイスクリームの味にどう影響してくるのでしょうか?

なめらかさやミルキー感が強くなりますね。ただし、高ければ良いというわけではなく、なめらかさと軽さのバランスをとることが重要です。冨士冷菓は濃厚だけど食べやすい仕上がりを目指しています。

— また卵を使用していないと伺いました。卵を使用せずにアイスクリームを作るのは技術的に難しいと思いますが、どのようにして濃厚さや滑らかさを実現されていますか?

確かに卵を使わないと、濃厚さや滑らかさを出すのが難しい部分があります。ただ、うちでは練乳を多く使うことでコクを出しています。この練乳が昔懐かしいミルキーキャラメルのような味わいを作り出しているんです。さらに、生クリームと乳製品のバランスを工夫して、なめらかさを保っています。乳製品の水分量を細かく調整し、さっぱりしつつも満足感のあるアイスクリームに仕上げています。

またシャーベットは、果汁、果肉をふんだんに使っています。夏は夕張メロンの果肉を使い、ねっとりとしたシャーベットに仕上げております。またシャーベットには空気をたくさん含ませているのでスプーンもすごく滑らかに入れられます。

— 卵を使わず練乳を使っているからこんなにも美味しいんですね。ちなみに卵アレルギーの方からの反響はありますか?

卵を使っていないことで、アレルギーのあるお子さんやそのご家族から『安心して食べられる』と喜んでいただいています。卵を使わなくてもここまで美味しくできるのかと驚いていただけることが多いですね。


季節とともに生まれるフレーバーが魅力。旬と冬のおすすめアイスクリーム

—今から冬ですが、冬に特におすすめのアイスを教えてください。

「北海道クリームチーズ」をぜひおすすめしたいです。北海道のナチュラルクリームチーズにレモンを加え、レアチーズケーキをイメージしたアイスクリームで、濃厚でも、さっぱり爽やかなアイスになっております。

また酒粕アイスクリームもおすすめです。七飯町にある箱館醸蔵の日本酒「郷宝(ごっほう)」から仕入れた新鮮な酒粕を使用していて、酒粕独特の風味と甘みが特徴で、お米の旨味もしっかり感じられる一品です。特に5割磨きの純米吟醸の酒粕を使うことで、少しお米感が残り、奥深い味わいが生まれます。酒粕の美味しさのみを抽出できており、お酒っぽさが少なく食べやすい味になっております。

青森産紅玉リンゴを使ったアップルシナモンアイスも冬の定番商品で、リンゴの酸味とシナモンの香りが冬にぴったりです。

夏とか暑い季節にはシャーベットですね。冨士冷菓のシャーベットは果肉や果汁を使っていて暑い季節にはぴったりの製品になっています。

—脱線してしまいますが、中村さんの好きなアイスってどちらのフレーバーですか?(笑)

ほぼ全て好きですが、一番はピスタチオですかね。今でもピスタチオアイスクリームを作っているときにわざわざコーンに積みなおして食べちゃいます(笑)

—中村さんがピスタチオのアイスクリームが大変好きなのが伝わってきます!確か獺祭の酒粕を使ったアイスも販売されていましたよね。

今はお取引がなくなってしまい、販売は終了してしまいました。獺祭独特の華やかな香りと酒粕の味わいを表現できていたと思います。2016年に「ご当地アイスクリームグランプリ」で最高金賞と購買欲審査賞をダブル受賞いたしました。

旭酒造の桜井会長様がわざわざお越しいただいたこともあり、この獺祭さんと冨士冷菓のコラボレーションは、櫻井さんの「逆境経営」と言う本にも載っている話になっています。

—それはすごいですね!食べてみたかったです!

現在の酒粕あいす郷宝は、酒粕の香りとお米の旨味がバランスよく、獺祭とはまた違うアイスクリームになっております。


シンプルなパッケージに込めた想い。中身と味で勝負するアイス

—パッケージがシンプルなのはどういう意図があるのでしょう?私的にはモダンな感じがしていいなと思いました。

40種類以上のフレーバーがあるので、それぞれ専用のパッケージを作るとコストがかかります。やはりシールやオリジナルのパッケージを作ればそれなりに原価がかかってきてしまいます。それよりも、素材や製造工程にお金をかけたいという考えがあります。お客様に提供するのは見た目よりも中身の美味しさですから。

以前展示会などの関係者様からは「最初はみんなこういったパッケージですよ」と励ましていただいたことはありますが、私たちは創業以来パッケージではなく素材で勝負しています。

—その考え方はお客様に伝わっていると思いますか?

はい。シンプルなパッケージだからこそ、中身へのこだわりを感じ取っていただけると思っています。『派手さはないけれど、確かに美味しい』と評価していただけるのが嬉しいです。


挑戦、改良を繰り返す冨士冷菓の未来への展望

—今開発中、最近完成されたアイスクリームなどはありますか?

直近だと酒粕アイスでは酒蔵『郷宝(ごっほう)」』の酒粕を使い、フレッシュな香りを最大限に引き出したアイスクリームで「大人アイス」を実現しました。酒粕アイスは、『お土産に買いたい』という声をよくいただきます。

今開発中なのは「昆布アイス」です。函館産のとろろ昆布を使い、塩味と甘みを絶妙に調和させています。まだまだ試作段階ですが完成が非常に楽しみです。

—最後に読者に一言お願いいたします!

北海道や日本の素材を活かした商品をさらに冨士冷菓は広げていきたいです。冨士冷菓のアイスは、素材と手間を惜しまない丁寧な製法で作られています。季節限定のフレーバーも含めて、ぜひ一度その美味しさを体験してみてください。北海道の魅力をアイスを通じて感じていただけると嬉しいです!

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