アメリカ村の地下に佇む「PALMGARAGE」は、乗る人の個性やライフスタイルを表現するカスタムバイクを提案する特別な場所です。ここでは、選ぶ楽しさ、作る楽しさ、そして乗る楽しさが詰まった一台に出会えます。多くのカスタムバイクをお客様とともに作ってきたオーナーの笑中さんとの対話から見えるPALM GARAGEの魅力に迫ります。
1. アメ村の稀有なカスタム自転車ブランド「PALM GARAGE」の創業背景
—PALMGARAGEが始まった経緯について教えてください。
父が1970年代に始めたお店です。当時、スタイリッシュな町乗り用のオリジナル自転車を販売していましたが、時代の流れで閉店しました。→父の引退をきっかけに閉店しました。しかし当時は非常にスタイリッシュな自転車自体珍しくスタイリッシュ自転車だとクロスバイクなどの自転車が多かった印象です。しかし10年前に父が残した在庫を整理しているうちに、「このスタイリッシュなおしゃれな自転車を絶やしたくない」と思い、全く違う仕事→客室乗務員をしていたのですがもう一度この店をオープンさせたいと思い再スタートすることにしました。
—なるほど!お父様が創業されて、娘さんである笑中さんが引き継がれたんですね!笑中さんは昔から自転車が大好きだったのでしょうか?またアメ村からはどこか違う場所へ移ろうとは思わなかったんでしょうか?
実は自転車好きといった性格ではなく、PALMGARAGE→旧店名ベスパショップの自転車が好きといった方が正しいですね。子供の頃から大阪市内で父が販売していた自転車に乗っている方を良く見かけることがあり、父が販売していた自転車に関しては馴染みがありましたね。また場所を移らなかった大きな理由としては、アメ村の文化や父の信念を引き継ぎたいという気持ちが強かったんです。ここはトレンドと文化が交差する特別な場所。今は古着屋が多い街になってしまいましたが(笑)
新しいPALMGARAGEのスタイリッシュなカスタムバイクを広げていきたいという思いが背中を押してくれ、アメ村にあるカスタム自転車ブランド『PALMGARAGE』再開につながりました。
2. あえてこの時代に自分だけの「自転車」を作るわけ。
—PALMGARAGEさんのコンセプト「シンプルスマート・オンリーワン」をお客様に伝える上で特別に工夫されていることはありますか?
実際に一対一でじっくりと説明することを心がけています。ホームページだけでは、伝わらない実際のデザイン性や乗り心地、自分が作った世界に一台だけの自転車を持つ意味というのを納得していただいて、ご購入いただけるように努力しています。そのためご購入いただいたお客様は「自転車好き」というよりは、「PALMGARAGEの自転車が好き」といったお客様が多いように感じます。
よく「自転車は2〜3万円で買うもの」という感覚を持たれている方も多いです。そんな中で、PALMGARAGEの自転車に乗りたい!自分の「なぜこの自転車が10万円以上するのか」という説明を丁寧に行い、その価値に納得してもらうことを大切にしています。
—意外に自転車って市内や都会の人からしたら、多くの時間を過ごす相棒でもありますよね!
そうなんですよね。自転車は日常の移動手段として、家から駅までや買い物まで、または遊びにいく時に乗るといった様々な用途で使われますよね。
自転車は、特別な日に乗るものではなく毎日一番身近にあるもの。特に大阪市内のような都市では、車を使うより自転車のほうが便利な場面が多いです。だからこそ、気軽に乗れるけど「こだわりの一台」に常に乗って気分をあげる。そんな自転車を作り続けたいと思っています。
〜余談〜
—PALM GARAGEさんのカスタム自転車ってお高いんじゃないですか?
確かに、カスタム自転車はめちゃくちゃ高いものが多いです。100万円近いものも珍しくありません。でも、うちは10万円前後でフレームカラーオーダーができるので、手の届きやすい価格帯でありながら、本格的なカスタム体験を提供できるのが特徴です。このフレームカラーを選べて10万円前後のオーダーメイドの自転車って実は相当安いんです!カスタム自転車にしては安い!という点でもPALM GARAGEを広げて、カスタム自転車デビューをしていただきたいです。
3. 自由すぎるカスタム—フレームカラーからペダルまで全て選べる楽しさ
—カスタム自転車では具体的にどの部分が選べるんですか?
フレームカラー、サドル、ハンドル、タイヤ、ブレーキワイヤー、ペダルなど、ほぼ全てです。特にフレームカラーは一番人気で、お客様の持参した色見本を基に塗装することができます。例えば、「この雑誌の表紙と同じ色にしたい」といったリクエストにも応えています。
—え!すごいですね!塗装にそんなに細かく対応できるんですか?
はい、職人さんが一台ずつ丁寧に塗装しますので10cm正方形の紙一枚分の色があればその色のフレームカラーができます。色を決める時は室内で見るだけでなく、日光の下で色味を確認をしていただいたりして、決めていきます。
フレームカラーはすごく大事でカスタム自転車の見た目の主役となる部分ですから、カスタムしている際は悩まれることが多いですね。色を1から決めていくのは案外大変な作業で、アイデアをお客様と一緒に出し合いながら決めていきます。
—なるほど。フレーム以外で特に人気のあるカスタムポイントはどこですか?
悩ましいですが、サドルですね。サドルって脇役に見られがちなんですが、オプションでサドルをワンランクいいのにあげると非常に自転車が締まって見えて自転車全体の見た目もグンっと格好良くなります。イギリス製のブルックスや、日本製のカシマックスなど、高級サドルを揃えています。見た目だけでなく、実際の座り心地も抜群なので、一度触れていただくとアップグレードを決める方が多いです。
—奥が深すぎます!細かい部分のカスタムもできると聞きましたが、具体的には?
ブレーキワイヤーやタイヤの色選びも重要なポイントです。ワイヤーは日本製の日泉(NISSEN)を使っていますが、色が豊富なので同じトーンでまとめたり、差し色にしたりとお客様の個性を反映できます。タイヤもクラシックな白壁タイヤや、最新の軽量タイヤまで幅広く揃えています。
—それだけパーツ選びがあると、カスタム過程で迷うお客様も多いのでは?
そうですね。特にフレームカラーは迷われる方が多いですね。例えば、緑が好きと言われても、鮮やかな緑なのか、くすんだ緑なのかで全然違います。そんな時は、普段の服装や使うシーンについてお話を伺いながらアドバイスしています。しかしその迷っている時間も楽しいと思ってもらえるのが理想です。カスタム自転車の醍醐味はやはり「自分だけの一台」を作るということですから、時間をかけてもいいんです。
4. あえて国産でなるべくそろえたPALM GARAGEのカスタムバイクパーツたち
—パーツの選定について、特にこだわりがあると伺いました。国産のものが多く使われているんですか?またなぜ国産にこだわり続けているんですか?
はい、できるだけ国産のパーツを使うようにしています。もちろん国産だけでなく、海外産のものを使ったりすることもあるのですがなるべく国産製品を取り寄せています。ここは私自身のエゴも入っているのですが、国産製品を使うことで「安心」や「壊れにくさ」、「こだわり」を表現しています。また自転車は長く使って頂きたいので、メンテナンスのしやすさを考えると、国産パーツに勝るものはありません。また台湾や中国産が多くなってきている業界の中で国産のパーツを選ぶことで、国内の製造業を支えることにも繋がります。
—どんな国産パーツを他には使っていますか?
ブレーキはダイアコンペ、サドルの一部やハンドルバーも日本製のものを採用しています。例えば、競輪用のパーツメーカーで知られる日東(NITTO)のハンドルバーは、デザイン性も高く、耐久性にも優れています。こういったパーツを取り入れることで、カスタム自転車としてのクオリティをさらに引き上げられると考えています。
—日本製ならではの魅力を感じるポイントはどこでしょう?
細かい作り込みや仕上がりの美しさですね。それに、海外製品に比べてパーツの供給が安定しているので、長期的にメンテナンスを行う上でも安心感があります。例えば、20~30年前に購入された自転車でも、必要なパーツを取り寄せて修理することが可能です。お客様が「この部分だけ変えたい」といった要望も随時受け付けることができています。
—せっかくカスタムした自転車は長く乗りたいですよね。メンテナンスも安心となればPALM GARAGEさんの自転車は長く乗り続けられますね!
5. 忘れられないお客様とのストーリー
—印象に残っているお客様のエピソードを教えてください。
時々びっくりされるのですが、お客様とカスタムのお話をしている時間長くいることも多いですし、お客様それぞれにストーリーがあるのでほぼ全てのお客様の顔とご購入された自転車はなんとなく覚えています。
今ふと思い出した印象的なエピソードとしては、高校生ぐらいの思春期真っ只中の息子さんとお父さんが来店されたことがあって、最初はおとなしく話さない息子さんだったのですが、パーツを一つ一つカスタムしていると徐々に楽しんでくれたのか、興奮して目がキラキラしながらカスタム自転車を作り上げていったことが印象的ではっきりと覚えています。
お父さんが決めるのかなと思っていたのですが途中から息子さんが意見を出し始めて、最終的には全て自分でカスタムを仕上げました。完成した自転車を見た時の笑顔が忘れられません。
—お客様それぞれの思いを一台に込める、それこそ自分で作る醍醐味ですよね!遠方からのお客様も沢山ご来店されているんですか?
新潟や静岡から毎年来てくださる方もいます。毎年訪れることで、少しずつパーツを変えたり、新しいカスタムを試して楽しんでいるようです。
6. PALM GARAGEが見据えるこれからの挑戦
—今後の展望について教えてください。
インバウンド向けの自転車ツアーを企画しています。アメ村を拠点に、PALMGARAGE産の自転車に乗りながら大阪を案内し日本酒体験やチャンバラ体験を組み合わせて、大阪の魅力を発信したいと考えています。アメ村は立地的に海外のお客様がふらっと立ち寄っていただけることも多いです。そういったインバウンドのお客様にもPALMGARAGEの自転車を楽しんでいただける機会も作りたいと今動いております!
また、女性や子供向けのカスタム電動自転車専門店を作るのも目標です。
自転車ってどうしても男性向けに寄っていることが多いのが現状です。そこでPALM GARAGEがお母さんもお子さんも気分が上がる自転車を作れる店舗を作れたらな〜とも考えています!電動自転車はカスタムが難しいのでパーツだけ変えておしゃれにするといったこともしていきたいです!
取材を終えて:
PALM GARAGEの自転車には、単なる移動手段を超えた魅力が詰まっていました。オーナーとお客様が対話しながら「自分だけの一台」を作り上げる姿は本当に楽しそうで、こちらまでワクワクしました。細部に宿るこだわりや、国産パーツへの愛着も印象的。特に、「自転車は生活を楽しむためのもの」という言葉が心に残りました。この場所で生まれる自転車が、きっと多くの人の日常を特別なものにしてくれるだろうと感じます。
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