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能登の農業を支え、新たな未来を築く — 能登新鮮組が挑む地域活性化と持続可能な農業

石川県能登の個人農家が協力して結成された若手農業集団「能登新鮮組」。その代表を務める大森さんに、結成の背景や震災を乗り越えての挑戦、そして未来の展望について語っていただきました。


能登新鮮組誕生の経緯

—まず、能登新鮮組について教えていただけますか?
能登新鮮組というのは、石川県能登半島にある農家が集まって作ったグループの名前です。現在、約11軒の農家が在籍しており、能登新鮮組のブランドで共同で出荷を行っています。もともとは個々の農家が独立して活動していましたが、2016年頃にアルプラザ平和堂というショッピングセンターのバイヤー様から「ホウレンソウを長期で販売できるようにそれぞれの農家が栽培時期をずらして販売するリレー栽培をしてみたらどうか」と提案があり、そこからグループとしての活動が始まりました。そこから他の野菜も売りたいと声が出てきて、今ではトータルで50品目近くを販売しています。

—きっかけはバイヤー様からのご提案だったんですね!「能登新鮮組」という名前にはどのような思いが込められているのでしょうか?
最初にバイヤー様から「グループとしてやるなら名前をつけたらどうか」と提案されたんです。そこで仲間と色々考えて、野菜のイメージアップにもなる「新鮮組にしよう!」とチームとしてまとまり、能登の農業を盛り上げるという思いを込めて「能登新鮮組」と名付けました。

—「能登新鮮組」って響きがかっこいいですよね!若い農家様が多い印象ですが、意図的に若い層を集めたのでしょうか?
特に若手に限定したわけではありませんが、自然と30代前半のメンバーが多く集まりました。現在は40歳前後が中心ですが、地元出身者だけでなく、移住してきた農家も多くいます。やっぱり個人でやっていると、最初は販売先がないことが多いのですが、能登新鮮組に入っていただくと既存の売り先を提供できるので、地元の農家を支える役割も担っていると思っています。

震災と農業の挑戦

—2024年の能登半島地震では、農業にも大きな影響があったと伺いました。
非常に厳しい状況でした。特に水道が断水し、2〜3ヶ月間は水が使えない状況が続きました。農家は湧き水の場所を知っていたり貯水タンクやエンジンポンプなどを持っているので、なんとか水は確保できていましたが、それでも通常の作業を維持するのは困難でした。水が確保できないことで野菜の洗浄や収穫の遅れが発生し、生産量が大幅に減少しました。

—販売や流通にはどのような影響がありましたか?
地震直後は道路が寸断され、物流が完全に止まってしまいましたね。しかし、その後復興支援として「能登の野菜を買いたい」という声が増え、販売先はむしろ拡大しました。大手スーパーのアルプラザ平和堂や地元のスーパーの方々ももっと売って欲しいと言っていただき取扱いが増えたので、当時は本当にありがたかったです。

—復興支援というと寄付が最初に思いつきますが、被災地の農作物を買うことで復興支援だけでなく購入者も喜ぶ仕組みはもっと広まって欲しいですね。生産面に関しても震災前の状況に戻ってきたのでしょうか?
実は復興支援の影響で販路が広がった一方で、生産体制の復旧が課題になっています。震災で農地や設備が被害を受けた上に、人手不足はまだまだ回復していません。私の場合は、震災前まで3〜4人のアルバイトがいて5人体制で生産していたのですが、震災の影響で現在はほぼ一人で運営している状態です。そのため生産はもちろん、能登新鮮組の活動や発信活動、問い合わせ対応やSNS対応など全てやっている状態なので、一時期は心が折れそうな状態でした(笑)。流石に大変なので、来月ごろから特定技能実習生を招いて人手不足解消に向けて行動するつもりです。

能登の野菜が持つ価値

—能登の野菜にはどのような特徴がありますか?
能登はもともと米作が盛んな地域ですが、野菜も豊富に生産されています。特に冬野菜は寒さで糖度が上がり、甘みが強くなるのが特徴です。能登の冷涼な気候が野菜の成長をゆっくりと促し、結果としてしっかりとした旨味と栄養価の高い作物を生み出します。ただ、冬の厳しい環境で育つため、あられや雪などの影響で見た目は市場向きではないこともあります。でも、味は抜群に美味しいです!
また、能登では地域に伝わる伝統野菜も多く栽培されています。例えば「中島菜」という在来種の葉物野菜は、ほのかな辛みと苦味が特徴で、おひたしや漬物に最適です。こうした伝統野菜は、地元の気候や土壌に適応し、風味豊かに育つため、能登ならではの食文化を支えています。

—そんな能登の野菜を生産している能登新鮮組の野菜はどちらで販売されていますか?
地元のスーパーやアルプラザ平和堂がほとんどで、オンライン販売ではポケットマルシェという産地直送のサイトのみです。ポケットマルシェではその時期に収穫できる7品目以上を詰め合わせたセットを販売しています。中身はランダムですが、事前にどんな野菜が入るかをリストアップしてお知らせしています。リピーター様も増えていて、震災後に6回以上注文してくれている方もいます。

能登新鮮組が描く未来 — 持続可能な農業と地域の発展

—今後の能登新鮮組の目標を教えてください。
まずは能登新鮮組に所属している個々の農家がさらに成長し、生産量を増やしていくことが目標です。現在は需要と供給のバランスで言うと需要の方が大きく供給が足りていない状況です。より供給を増やすためにも、栽培技術の向上はもちろん、人手不足を解消しつつ機械化などによる効率化を行い、より能登の野菜を生産して地域活性化に貢献したいと考えています。

—能登新鮮組として、新たに挑戦したいことはありますか?
能登の農業は、高齢化や耕作放棄地の増加といった課題に直面しています。そのため、若い農家を増やし、規模拡大と機械化を進めることが必要だと考えています。また、能登の伝統野菜や在来種を守りながら、新しい形で発信することも大事だと思っています。もし能登地方を応援したいというやる気があって能登新鮮組に興味がある方がいれば、ぜひご連絡して欲しいですね。一緒に能登地方を盛り上げましょう。

—消費者の方へのメッセージ
震災後、販路の復旧が難しい時期に「能登の農家を応援したい」という気持ちで、たくさんの方が能登新鮮組の野菜を購入してくださいました。SNSやECサイトを通じて「応援しています」という声をいただくことも多く、それが私たちの大きな支えになりました。当時の方々には本当に感謝を伝えたいです。
現在、震災からの復興はまだ道半ばですが、私たちは前を向いて進んでいます。能登新鮮組の野菜を手に取っていただけることが何よりの励みになるので、ぜひ一度、能登の野菜の味を楽しんでみてください。

——取材を終えて。

能登新鮮組様の農業に対する熱意と、震災からの復興への強い意志を感じることができました。ただ野菜を作るだけでなく、大森さんを筆頭に人手不足を解消するための取り組みや発信活動をしており、地域の未来を支えるという使命感を持ちながら日々挑戦を続けている姿が印象的でした。
消費者としても、ただ食べるだけでなく、生産者の想いや背景を知ることでより一層食を楽しむことができると感じます。能登の農業がさらなる発展を遂げることを期待しつつ、今後も能登新鮮組様の活動を応援させていただきます!

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